臨床例

首、肩のコリ 2017.03.21

首、肩のコリ

 

 治療院にふらっと、突然入ってきた中年の男性がいた。今から診てほしいと言う。ちょうど診察の合間で、ベットが空いていた。こちらへどうぞと招き入れて、初診表を書いてもらった。岩手県と書いてある、岩手から来たのですか、私は船乗りで今日、丸亀の港に着いたのです。

 

 ああ、そうですか。初診表を書いてもらうと、首のコリと肩のコリが主訴であった。いつも治療している、首、肩のコリだなと思って、簡単に考えていた。

 

 いつもの首コリ、下腿陽3-2Lと、肩こり、背の4-3Kに治療して起き上がってもらい、首肩を動かしてみてください、どうですか楽になりましたか?

 

 肩首を回していたが、この男性、怒ったように、ぜんぜん良くなっていない。憮然として言い放った。おかしいな、普通ならこの治療で良くなるはずだが、何故だろう。それにしても腹が立つ、ぜんぜん良くなっていないと怒ったように言うことは無いだろう。

 

 そう思ったのだが、気を取り直して、何処が凝っている感じがするのですか?もう一度聞いてみた。首の前横から胸にかけて、引っ張るように凝っていて、首を横に向けても痛むという。

 何だ、ぜんぜん、肩、首のコリ方と違うところが痛いと言っているではないか。


最初は首の後ろと肩を押さえて、ここが凝っていると言っていたのに、そこのコリが取り除かれたら、別のところのコリを訴えている。

 

 それなら肩、首は良くなったがまだ、前の方のコリが残っていると言えばよいではないか、それも言わずにぜんぜんコリが取れていない、と怒ったように言うから腹が立つのだ。心の中でブツブツつぶやいた。

 

 とにかく、首の前面、に提鍼を当てて脈を診ると、なるほど実と虚の反応が出ている。これを取り除けばよいのだなと考えた。手の指で反応を探すと、手中指3-3Kに反応が出ていた。ウエーブで前腕陰3-3Kに飛び、ここを治療点とした。

 

 さっそく、鍼灸の治療をして、起き上がってもらい、どうですか首の状態を診てください。 男性はしばらく首、肩を動かしていたが、痛くない、軽い、とつぶやくように言ってから、もう一度、首肩を大きく動かして、大丈夫だ。良くなったよ、と言ってニコッと笑った。

 

 その笑顔は、田舎の素朴な親父さんの顔になっていた。

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